将棋・電王戦についての私見
− その7 −


余談ですが



  このHPを書くにあたり、これでもいろいろと調べました。
  無駄にするのも何なので余談として書きます。
  また、電王戦とは関係ない事ですが ・・・・ まぁ、書きたいので書きます。
  不愉快になることを予測される方は読まないでください。


プロ棋士に勝つのはいつか

  人工知能の一分野として、コンピュータで将棋が研究されるようになったのは、
  1970年代中頃だそうです。
  プロ棋士に勝ったのが、2013年ですから、約40年かかったわけです。

  ちなみに、ライト兄弟の初飛行が1903年、アポロの月面着陸が1969年ですから、
  66年で月までの物理的な距離・38万キロを超えたわけです。
  電王戦とは関係ないですね。


チェスとの比較

  チェスで、当時の世界チャンピオン・カスパロフ氏が IBM のコンピュータに負けたのは、1997年です。
  このニュースを聞いた時、私は将棋の将来を憂えるよりも、
  「ふん、西洋のチェスなんてそんな程度だ」 と吐き捨てるように思ったものです。
  「しょせん、西洋人には日本の神秘的な文化は理解できない」 などと見当外れの哲学を
  振り回していました。


頭の中の広さ

 −その1−
  夏目漱石の 「三四郎」 という小説には次のような一文があります。
   (主人公・三四郎は熊本出身です。)

  「熊本より東京は広い。 東京より日本は広い。 日本より・・・・
   ・・・・日本より頭の中の方が広いでしょう。」

 −その2−
  社会人になってから、車の中でラジオを聞いていたときのことです。
  NHKラジオの子供相談室というコーナーで、小学生の質問に
    「うちゅう は どれくらい ひろいのですか?」 というのがありました。

  この問いに答えて、大学の先生いわく、
    「宇宙は何十億年も前にビッグバンで生まれて、今でも広がっているんだよ。」
  続けて
    「宇宙には、いろんな星があって、どうのこうの・・・
     でも、こんなことを考える人間の頭の中は、宇宙よりも広いっていえるんだよぉ。
     わかったかい。」


  釈迦じゃあるまいし、こんなことが小学生でわかるわけないだろ。

  しかし、子供は 「わかった」 と答えていました。
  そう答えざるをえないことを子供は既に知っていたのです。 どんな学習によって?
  大学の先生は、この子供の学習能力にこそ驚嘆すべきです。

  皮肉はともかく、この子の印象には残ったかもしれません。
  この子が、こまっしゃくれた子供にならず、将来、宇宙飛行士か科学者になることを願ってやみません。


脳とコンピュータの変な比較

  人間の体の細胞は約60兆個だそうです。
  質量比からいって、脳は十分の一の6兆個もないでしょう。
  脳は、将棋の手を考える他に、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、感情を抱いたり、
  目から入った光を頭の中で映像化したりしていますから、
  実際に将棋の手を考えているのは、せいぜい1兆個でしょうか。 (こんなに無いと思うが。)

  一方、最新のCPU内部のトランジスタ数は、数億個だそうです。
  配線も同じくらいでしょう。
  コンピュータは、CPUのほかに、メモリ、入力用・出力用の回路もありますし、
  プログラムも必要です。 プログラムの1行を素子1個としましょう。
  (もっとも、プログラムを勘定に入れても、億のオーダーにはなりませんが。)

  仮に1台のコンピュータの素子数、配線数を合わせて、100億個としましょう。
  10台のクラスタを組んだとして、

  (脳細胞1兆個の人間) 対 (素子数1000億個のマシン)

  いい加減な試算なので、もしかしたら、それぞれ1桁くらい違っているかもしれません。
  そうしたら、脳細胞と素子数はほぼ同じということにもなります。
  試みに数字をあげてみましたが、なにがなんだかわかりません。
  無駄な試みでした。


局面の評価

  コンピュータ将棋ソフトには、評価関数がありますが、これはソフト開発者の個性が出るそうです。

  以前にNHK将棋講座で、山崎七段の 「チョイ悪将棋、逆転講座」 というのがありました。
   (たしか、こんなタイトルだったような気が)

  この講座では局面を、駒の損得、玉の堅さ、駒の働き を考慮し、悪さ加減を数値化していました。
  アマチュア向けの講座でしたが、プロ棋士も、この数値化をもっと高度に行っているのでしょうか?
  それとも、もっと別次元で考えているのでしょうか?


私の好きな棋士

  嫌いな棋士というのはいません。 ちょっとどうかと思う人はいますけど。
  好きな棋士を一人あげるとしたら、森下卓九段です。
  NHK杯の解説を聞いていて好きになりました。

  解説で大抵の棋士は、手の意味や読み筋を説明します。
  それは当然なのですが、森下九段は
  なぜその手を指すのか、または、指さないのか、理由をもっと掘り下げて説明してくれます。
  良い悪いだけでなく、人生哲学のようなものをアマチュアレベルにもわかるように説明してくれます。

  記憶にある森下先生の言葉です。

  私だったら、例えばこういう手は指さないんですよね。 
   前の手が無駄になってしまうので。
   でも、そういう事を気にしない棋士もいます。
   私なんか頑張り過ぎて不利になっちゃうんですけど。

  
よく才能といいますけど、才能って簡単に使えない言葉なんです。
   努力不足を才能が無いと、才能のせいにしてしまうことがあるので。

  
読むって苦しい作業なんです。

  
初段を目指すくらいのレベルであれば3手の読みでいいと思います。
   自分が指した手に対して、自分の都合の良いように読まないで
   相手がどう指すか、これをよく考えてください。


   最後の言葉は日本の外交政治についての助言にもなると思います。
     「日本が尖閣諸島を国有化したら、中国はどう出るか」
   日本の政治家に3手の読み、なんて言っても理解不能だろうけど。

     石田九段は手の解説をするときに、
     「これでもわからない人がいるでしょから、説明しますとねぇー・・・」 とか
     「ここまできてもわからない人がいるんですよぉー・・・」 とか
     「私たちにはわかりますけどねぇー、見てる人のための説明しますとねぇー・・・」 と
     恩着せがましく解説をしてくださいます。
     解説があなたの仕事でしょ。


コンピュータ将棋ソフトって何の役に立つの?

  一般的にいって最も当然の疑問だが、最も愚かしい疑問。
  人間の知的探求心を 「役に立つか、立たないか」 でしか測れない俗物。

  しかし実は私も、コンピュータが人間に勝ってなんの意味があるのか? とは感じています。
  これで脳の働きの一端が解明されるのでしょうか?
  人工知能の研究が進むのでしょうか?
  人間の直感や大局観がどんなものかがわかるのでしょうか?
  百歩譲ってそれらが解明されたとして、人は幸せになれるのでしょうか?

  私は、このような疑問を抱きそれに答え続ける行為にこそ意味がある、と考えるようにします。




No.1 ・はじめに
・電王戦とは
・プロ棋士とは
2013年 4月 27日
No.2 ・初めてニコニコ動画を見て
・プロの読み
2013年 4月 27日
No.3 ・全5局を見て
2013年 4月 27日
No.4 ・激闘、第4局 持将棋
・あじあじ考
2013年 4月 27日
No.5 ・人工知能
・コンピュータの能力とSF

2013年 4月 27日
No.6 ・将棋とプロ棋士への思い
2013年 5月 20日
No.7 ・余談ですが
2013年 5月 20日